多要素認証(MFA)とは?なぜ普通のMFAでは防げないのか¶
最終確認: 2026-10-27
30秒で復習¶
- MFA(エムエフエー)=「知っているもの」「持っているもの」「本人そのもの」のうち、2種類以上を組み合わせてログインすること。 パスワードだけより、乗っ取られにくい。
- MFAには強さの順番がある:SMS・電話 < 認証アプリのコード < プッシュ通知(番号の照合つき)< パスキー・FIDO2・証明書。
- 普通のMFA(SMS・コード・プッシュ)が防げない攻撃がある:偽サイトがコードを本物へ中継するリアルタイムフィッシング・AiTM、何度も承認を求めるMFA疲労、ログイン後のトークンや Cookie の盗難。
- 理由は、普通のMFAは「どのサイトにログインしているか」を確かめないから。人が偽サイトに入力すれば、そのまま使われる。
- パスキー(FIDO2)が防げる理由:鍵が本物のドメインに結び付いていて、偽サイトでは鍵が反応しない。秘密鍵も端末から出ない。
- それでも、ログインした後のトークンは盗まれうる。会社の端末からだけ許可する、トークンを端末に結び付ける、などを組み合わせる。
- 覚え方:「コードは人が運ぶから偽物にも渡る。パスキーは鍵が相手の住所(ドメイン)を確かめる」
こんな場面で出会う¶
- Microsoft Authenticator に「承認しますか?」や「表示されている番号を入力」と出る
- 身に覚えのない承認の通知が何度も届く(MFA 疲労攻撃のサイン)
- 「パスキーを作成しますか?」と聞かれる
用語の正式名称と読み方¶
| 用語 | 読み方・正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| MFA | Multi-Factor Authentication | 多要素認証。種類の違う要素を2つ以上組み合わせる |
| 2段階認証 | — | 手順が2段階。同じ種類(パスワード+秘密の質問)でも2段階と呼ぶことがあるので、MFAとは厳密には別 |
| OTP | One-Time Password | 1回だけ使えるコード(SMSや認証アプリの6桁など) |
| FIDO2 | ファイドツー | パスワードを使わず、公開鍵の仕組みでログインする標準 |
| パスキー | passkey | FIDO2 の鍵を、スマホやPCで使いやすくしたもの |
| フィッシング耐性 | — | 偽サイトにだまされても、認証情報が使われない性質 |
| AiTM | Adversary-in-the-Middle | 攻撃者が利用者と本物のサイトの間に入って、中継しながら盗む手口 |
| セッション Cookie・トークン | — | ログインした後に「ログイン済み」を示すデータ。持っている人が使える |
質問:MFAとは?¶
答え: 本人確認の「要素」を種類の違う2つ以上組み合わせること。パスワードが漏れても、もう1つの要素がなければログインできない。
| 要素 | 例 | 弱点 |
|---|---|---|
| 知っているもの(知識) | パスワード、PIN、秘密の質問 | 漏れる・推測される・使い回される |
| 持っているもの(所持) | スマホ(認証アプリ・SMS)、セキュリティキー、ICカード、証明書の入った端末 | なくす・盗まれる・SIMを乗っ取られる |
| 本人そのもの(生体) | 指紋、顔 | 変えられない(ただし多くは端末の中だけで照合する) |
- パスワード+秘密の質問は、どちらも「知っているもの」なので、MFAではない(2段階ではある)。
- パスキーでは、スマホやPC(持っているもの)に入った鍵を、指紋・顔・PINで使う。1回の操作で2つの要素がそろう。
質問:MFAの方式には、どんな強さの違いがある?¶
答え: 「偽サイトにだまされたときにも守れるか(フィッシング耐性)」で大きく分かれる。
| 方式 | 強さ | 主な弱点 |
|---|---|---|
| パスワードだけ | ✕ | 漏えい・使い回し・総当たり |
| SMS・音声電話のコード | △ | SIMの乗っ取り(SIMスワップ)、偽サイトへの入力、SMSの盗み見 |
| 認証アプリのコード(6桁) | ○ | 偽サイトに入力すると、そのまま中継される |
| プッシュ通知(番号の照合つき) | ○ | MFA疲労は番号の照合でかなり防げるが、偽サイトへの中継(AiTM)は防げない |
| パスキー・FIDO2・Windows Hello for Business・証明書 | ◎ フィッシング耐性あり | 端末の紛失時の手続き、ログイン後のトークン盗難は別に対策が必要 |
- 「MFAをしているか」だけでなく、「どの方式か」が大事。Entra ID では、条件付きアクセスの認証強度で「フィッシング耐性のある MFA だけ許可」と指定できる。
質問:なぜ普通のMFAでは防げないのか?¶
答え: 普通のMFA(SMS・コード・プッシュ)は、どのサイトにログインしているかを確かめない。人が偽サイトにコードを入れたり、承認ボタンを押したりすれば、攻撃者はそれをそのまま本物に使える。さらに、ログインした後のトークンや Cookieは、MFAとは関係なく使える。
防げない攻撃の一覧¶
| 攻撃 | 何が起きる | 普通のMFAで防げない理由 |
|---|---|---|
| リアルタイムフィッシング | 偽サイトに入れたパスワードとコードを、攻撃者がすぐ本物に入力する | コードは30秒くらい有効で、どこで入力されたかを区別しない |
| AiTMフィッシング | 偽サイトが本物への中継(リバースプロキシ)になっていて、ログイン後の Cookie を盗む | 利用者は本物と同じ画面でMFAまで終わらせてしまう。盗まれるのはMFAの後のもの(→プロキシの攻撃者視点) |
| MFA疲労(プッシュ爆撃) | 夜中に何十回も「承認しますか?」を送り、根負けして押させる | パスワードはすでに盗まれていて、人が押せば通る |
| SIMスワップ | 携帯会社をだまして電話番号を自分のSIMに移し、SMSのコードを受け取る | SMSは電話番号に届くので、番号を取られると終わり |
| トークン・Cookie の盗難 | PCに入ったマルウェアが、ブラウザに保存されたログイン済みの Cookie を盗む | ログインはもう終わっている。MFAは「ログインのとき」しか確かめない |
| ヘルプデスクへのなりすまし | 「スマホをなくした」と電話して、MFAをリセットしてもらう | MFAの仕組みの外側(手続き)を狙われる |
| レガシー認証 | MFAに対応していない古い方式(古いメールの方式など)でログインする | その方式では、そもそもMFAが求められない |
| 同意フィッシング・デバイスコード | 本物の画面で、攻撃者のアプリへの同意やコード入力をさせる | 利用者が本物の画面で自分でMFAを通して許可してしまう(→OAuth) |
パスキー(FIDO2)なら、なぜ防げるのか¶
- 鍵が、本物のドメイン(例:
login.microsoftonline.com)に結び付いている。 ブラウザが「今どのサイトにいるか」を鍵に伝えるので、偽のドメインでは鍵が反応しない。人がだまされても、鍵はだまされない。 - 秘密鍵が端末から出ない。 サーバーに送るのは、その場かぎりの署名だけ。盗み見ても使い回せない。
- 入力するコードがない。 人が運ぶものがないので、中継のしようがない。
パスキーでも防げないもの
パスキーが守るのは「ログインの瞬間」。ログインした後の Cookie やトークンを、PCに入ったマルウェアに盗まれると使われてしまう。会社の端末からだけ許可(条件付きアクセスの準拠端末)、トークンを端末に結び付ける仕組み、EDR、怪しいサインインですぐにトークンを無効化する仕組み(継続的アクセス評価)を組み合わせる。
質問:会社として、どう対策を組み合わせる?¶
| 対策 | 防げるもの |
|---|---|
| パスキー・FIDO2・Windows Hello for Business・証明書を使う(まず管理者から) | リアルタイムフィッシング、AiTM、SIMスワップ、MFA疲労 |
| プッシュ通知には番号の照合と、アプリ名・場所の表示を付ける | MFA疲労 |
| 条件付きアクセスで、会社の管理する端末からだけ許可する(→SASEの条件による制御) | 盗んだパスワード・Cookie を、攻撃者の端末で使われること |
| レガシー認証を止める | MFAの抜け道 |
| 認証強度で、重要なアプリには「フィッシング耐性のあるMFAだけ」を求める | 弱い方式への逃げ道 |
| トークンの期限を短く、怪しいときはすぐ無効化(継続的アクセス評価) | 盗まれたトークンの使い回し |
| ヘルプデスクでの本人確認の手順を決める(折り返し電話、上長の承認など) | なりすましによる MFA のリセット |
| 利用者への承認ボタンの教育:「自分がログインしていないときの通知は、絶対に承認しない・報告する」 | MFA疲労 |
具体例¶
| 場面 | おすすめ |
|---|---|
| 管理者アカウント | パスキー・FIDO2 のセキュリティキーだけを許可。会社の端末からだけ |
| 一般の社員 | 認証アプリ(番号の照合つき)から始めて、パスキーへ移行する |
| SMS しか使っていない | まず認証アプリへ。SMS は予備にとどめる |
| 外出先のPCからのログイン | 会社の端末以外は、ブラウザで閲覧だけにする |
| 「承認しますか?」が何回も来た | 押さない。パスワードが漏れているので、すぐ変えて報告する |
関連メモ¶
確認したいこと¶
- 会社の MFA の方式は何か(SMS・認証アプリ・プッシュ・パスキー)。SMS だけの人はいないか
- 管理者アカウントは、フィッシング耐性のある MFA(パスキー・FIDO2)になっているか
- 条件付きアクセスで、会社の端末からだけ許可しているか。レガシー認証は止めているか
- ヘルプデスクで MFA をリセットするときの本人確認の手順は決まっているか